大型犬のドッグフードの選び方【獣医師が教える4つのポイント】

大型犬のドッグフードの選び方には何かポイントがあるのかな?

そうだね。やっぱり体格がずいぶん違う大型犬と小型犬では、フードの量はもちろんのこと、成分も全く同じっていうわけにはいかないね。

具体的にどう選んだらいいのかな?大型犬用ってあまり多くないし。

日本は大型犬自体の数が少ないからね。基本的には大型犬の大きな骨格や体を作るためにしっかり栄養バランスが取れて、たんぱく質が豊富なドッグフードが必要だよ。また、肥満にさせないために脂肪分が多すぎないとか、フードの粒が大きいものを選ぶことも大切だね!
日本では、圧倒的に小型犬の飼育頭数が多く、ドッグフードも小型犬用に作られたものが大多数を占めています。しかし、大型犬に理想的な栄養成分やフードの形状は小型犬用フードとは少し違うため、大型犬に小型犬用フードを食べさせることはあまりよくありません。
今回は、大型犬用のドッグフードの選び方を考えるとともに、フードを食べさせるときの注意点も一緒に見ていきましょう。
もくじ
大型犬のドッグフードの選び方
1. カルシウム濃度とリンとのバランス
大型犬のドッグフード選びで非常に多い誤解が、「骨の健康のためにカルシウムをたくさん取らせる」というものです。ペットショップなどからカルシウムサプリメントを出されて、子犬のご飯に振りかけている飼い主さんも多いようですが、カルシウムサプリメントは全く意味がないだけでなく、むしろ逆に関節の成長に悪影響を及ぼしてしまうのです。
大型犬のドッグフードで最も大切なのは、カルシウムの量が適量で、カルシウムとリンとのバランスが取れていることです。カルシウムが1~2%配合されて、カルシウム:リン=1:1~1.4:1のドッグフードが理想だと言われています。大型犬を飼っている場合には、カルシウムがその範囲に収まっているドッグフードを選び、カルシウムサプリメントは絶対に与えないようにしましょう。
2. たんぱく質が豊富
大型犬は骨だけでなく筋肉も大きいため、たんぱく質の要求量も多いです。かといって、たんぱく質が多すぎても良くありません。たんぱく質の理想は25~30%程度だと言われています。たんぱく質が20%を切るようなドッグフードはやめておいた方がいいでしょう。
3. 脂肪分は控えめに
脂肪分はもちろん体に必要な栄養成分ですが、取りすぎると肥満に原因になります。特に大型犬では
- 小型犬に比べて、体重が重い大型犬では、肥満になった時の関節の負担が大きい
- 日本では大型犬にとって十分な運動ができないことが多い
ということから、肥満になりやすく、肥満犬の関節の負担が大きいのです。子犬の肥満は関節の成長にも影響しますし、高齢での肥満は関節への負担から起立困難になってしまうこともあります。太りすぎないよう、脂肪の量があまり多くないドッグフードを選びましょう。成犬用フードであれば脂肪分は15%以下に抑えておいた方がいいでしょう。
4. 大粒ドッグフード
大型犬のドッグフードは、小型犬のフードに比べて粒が大きくなっています。大粒フードを大型犬に食べさせるのには以下のような2つのメリットがあります。
- 噛んで食べることで、ドッグフードを丸呑みして胃に溜まってしまい、非常に危険な胃拡張・捻転症候群のリスクを減らす
- 噛んで食べることで、歯石を溜めにくくする
小型犬用のような小粒フードは大型犬には合いませんので、大きめの粒のフードを選んでおきましょう。
大型犬のドッグフードのサイズの選び方
次に、ドッグフードのサイズ(kg)をどう選んだらいいかも考えてみましょう。
基本的には、ドッグフードは開封後1か月以内に食べることがすすめられています。開封後1か月以内なら、酸化による品質の劣化や風味の減少がそれほどないため、新鮮でおいしいドッグフードを食べることができます。
以下に体重ごとの1日および1か月のドッグフード量を載せておきますので、参考にしてみてください。ただしあくまで目安ですので、実際にドッグフードを与える際には、カロリーや避妊・去勢の有無、愛犬の肥満度や年齢を考えて、ドッグフードの1日量を決めるようにしてください。
大型犬の食事量の目安(避妊/去勢済、健康な成犬)
体重 | 必要カロリー | 300kcal/100gのフード | 400kcal/100gのフード | ||
---|---|---|---|---|---|
1日のフード | 1ヶ月のフード | 1日のフード | 1ヶ月のフード | ||
20kg | 1,059kcal | 353g | 10.6kg | 265g | 8.0kg |
25kg | 1,252kcal | 417g | 12.5kg | 313g | 9.4kg |
30㎏ | 1,436kcal | 479g | 14.4kg | 359g | 10.8kg |
35kg | 1,612kcal | 537g | 16.1kg | 403g | 12.1kg |
40kg | 1,781kcal | 594g | 17.8kg | 446g | 13.4kg |
この表を見ると、1か月で使い切るなら、20㎏くらいの大型犬では10㎏のフード、40㎏近くの超大型犬でも15kgくらいのフードにしておいた方がよさそうですね。
大型犬にフードを与えるときの注意点
最後にフードを与えるときの注意点も覚えておいてくださいね。
1. 食後の運動は控える
大型犬で非常に怖い病気の1つが、「胃拡張・捻転症候群」です。これは、食後に胃が膨らんだ状態でねじれてしまうことで、胃が張って血流が悪化してしまう病気です。特に5歳以降の大型犬に多く、非常に致死率の高い怖い病気です。
原因としては胃の運動低下や食べ過ぎだと言われています。食後はできるだけ激しい運動を控えて消化を優先させるようにしてあげてください。また、1回量を少し減らして食事回数を増やしてもいいでしょう。
2. 噛んで食べる癖をつける
大型犬では、ドッグフードを入れて30秒もしないうちに完食してしまう子も珍しくありません。そんな子ではほとんどフードを噛まずに食べています。フードを噛まずに食べると消化に悪いですし、歯石も付きやすくなります。
少しずつ手の平から上げたり、大きめの粒のものに変えるなど、できるだけ噛んで食べる癖をつけさせてあげるといいでしょう。
3. ドッグフード切り替えの時期に注意
小型犬では、1歳で成犬用フード、7歳でシニア用フードに変えるケースが多いです。ただし、大型犬では成長が遅く、老化が早いという性質があるため、ドッグフード切り替えのタイミングが小型犬と異なります。成犬用フードには約15か月、シニア用フードには5~6歳頃から切り替えるといいでしょう。
まとめ
大型犬のドッグフード選びは、小型犬とは少し違います。「ゴールデンレトリバー用」などの特定犬種専用のフードを食べさせる必要はありませんが、大型犬が必要とする栄養成分を含んだ、少し大きめの粒のドッグフードを選ぶようにしましょうね!