ドッグフードで生肉を混ぜるのってアリ?犬は喜ぶ?

ドッグフードに生肉を混ぜるのっておすすめですか?
友人が犬に「生肉」を与えていて、生肉を与え始めてから体調がよさそうだって言ってるんです。犬に生肉っていいんですか?

生肉を与えることには、メリットもあればデメリットもあるんだよ。だから生肉を与えるべきだってことはないんだよ。少なくとも、生肉だけを与えることはいいことではないね。

そうなんですね。じゃあ、生肉を与えるのって何かメリットってあるんですか?

生肉には、太りにくい・アレルギーが出にくい・歯石が付きにくいなどのメリットがあるから、肥満・アレルギー・歯石などが気になる犬にはいいかもしれないね。

なるほど。もし生肉を与えるなら、何か注意点はあるんでしょうか?

生肉は傷みやすいから鮮度は大切だね。また、生肉だけでは必要な栄養素を取ることはできないから、必ずドッグフードや手作り食に混ぜて与えないといけないよね。
犬本来の食餌を与えるのであれば、生肉を与えるべきだという考えがありますが、果たして本当にそうなのでしょうか?
生肉を与えることにはいい面もありますが、気を付けないといけないこともあります。今回は、犬に生肉を与えるべきなのかどうか、また生肉を与える場合に何に注意をした方がいいのか考えてみましょう。
もくじ
犬は肉食?雑食?
まず知っておくべきことは、犬が肉食なのか雑食なのかということです。そこでポイントになるのは「腸の長さ」です。腸は食物を消化吸収する場所ですが、一般的に草食動物では長く、肉食動物では短い傾向にあります。
草食動物の馬や羊の腸は体長の20倍以上あるのに対し、肉食動物であるライオンや猫は約3~4倍、犬は5~7倍と言われています。つまり、犬は猫のように完全な肉食ではないものの、肉食に近い雑食動物だと考えられます。実際に、犬の祖先の狼は果実も食べていたという報告もありますし、草食動物が食べた植物の栄養を取るために胃の容積が大きい「反芻動物」を好んで食べていたとも言われています。
つまり、犬は生肉だけ食べていると栄養バランスを崩してしまうんです。
生肉を与えるメリット
犬は生肉だけでは栄養バランスが崩れてしまいますが、生肉を与えることにはいくつかのメリットがあります。
太りにくい
調理された肉に比べ生肉は消化しにくいため、消化に使う「食事誘発性熱代謝」が高くなります。そのため、加熱調理されていない生肉を食べることで、全体的な消費カロリーが増え、同じカロリーのものを食べても太りにくくなるんですね。
アレルギーを起こしにくい
犬には食物アレルギーが多く発生します。犬の食物アレルギーは、慢性的な皮膚炎として症状が出て来ることが多いです。アレルギーの原因はたくさんありますが、加工の際に使う添加物なども食物アレルギーの原因の一つだと言われています。
生肉には基本的には添加物が含まれておらず、その動物の肉のたんぱく質のみからなりますので、アレルギーを起こす可能性が低いフードなんです。加工肉のおやつより、生肉をおやつとして使う方がアレルギーのリスクは少なくなります。
歯の健康を保つ
小型犬を中心に、加齢とともに歯石が付いて歯周病を起こしてしまう犬は多いです。歯周病菌は歯茎から血液を通して全身へ移行し、心内膜炎や腎不全の原因となる可能性も指摘されています。
ドッグフードはほとんど噛まずに飲み込んでしまう犬も多いですが、生肉をある程度の大きさで与えると、しっかり噛んで飲み込みます。犬の奥歯(臼歯)の一部は、「裂肉歯(れつにくし)」と呼ばれ、生肉を噛みちぎるために使われていた歯です。生肉を与えることでしっかり噛んで飲み込むようになるため、唾液分泌が増え、歯の表面が物理的にこすれて歯垢や歯石が付きにくくなり、結果として健康な歯や歯茎を維持できるのです。
食餌の楽しみが増える
犬は本能的に生肉を好んで食べます。特に大型犬ではその傾向が強くなります。生肉を与えることで、犬の摂食本能を刺激してくれるため、犬にとってご飯の時間がより楽しくなります。
生肉を与える問題点
生肉を与えることにはいくつかのメリットがありますが、いいことばかりではなく問題点もあります。
生肉だけでは栄養が偏る
生肉はたんぱく質の固まりである筋肉です。肉と言えばこの筋肉を思い浮かべる人は多いと思いますが、肉食動物は筋肉以外の内臓を好んで食べます。消化した植物を多く含む胃腸や鉄分などのミネラルが豊富な肝臓など、筋肉以外の部位をしっかり食べて栄養バランスを維持しています。
つまり、野生の肉食動物は筋肉だけを食べて居る訳ではないんです。肉食に近い雑食動物である犬は、生肉だけを食べていると栄養バランスを崩してしまいます。
寄生虫に注意
豚肉などの生肉には「トキソプラズマ」という寄生虫が含まれていることがあります。この寄生虫は犬の筋肉内に寄生して、発熱や嘔吐、下痢、呼吸困難などを起こすことがあります。トキソプラズマが存在する肉を加熱調理しないで食べると、犬もトキソプラズマに感染してしまう可能性があり、注意が必要です。
消化が悪い
加熱された肉はたんぱく質が変性しており、消化しやすくなっていますが、生肉は筋肉がしっかり残っているため消化が良くない食材です。生肉を食べることに胃腸が慣れていないと、消化不良により下痢や嘔吐をしてしまうこともあります。
食中毒のリスク
どれだけ清潔に保っても、肉には細菌が付着します。多少菌が存在しても加熱調理をすれば殺菌できますが、生肉の場合は過熱による殺菌ができません。そのため、生肉を与える場合はできるだけ新鮮なものを与える必要があります。また、鶏肉にはサルモネラ菌が多いと言われており(牛や鹿などにもありますが)、特に鮮度や信頼性には注意が必要な種類の肉になります。
生肉を与えるときに守るべき注意点
生肉を与える場合には、以下の点をしっかり守りましょう。
ドッグフードと生肉を混ぜる
生肉のみの食事では、犬の栄養バランスが大きく崩れてしまいます。主食はドッグフードにして、生肉はトッピングやおやつ代わりに与えてください。しっかりした栄養知識がある場合は、生肉を使って手作り食を作ってもらってもいいでしょう。
使う肉は馬や鹿を中心に
豚や鳥は寄生虫や食中毒のリスクが比較的高く、牛肉を含め、アレルギーを持っている犬は多いです。馬や鹿の肉は高たんぱく低脂肪で太りにくいだけでなく、これらの肉にアレルギーを持っている犬は少ないです。
そのため、生肉を選ぶ場合はできるだけ馬や鹿の肉を選びましょう。馬肉や鹿肉は、犬に使える生食用の冷凍肉として販売されていますので、探してみてください。
信頼性のある肉を鮮度の落ちないうちに
普通の肉は生食用に作られていません。人に比べ、犬の腸は強いため食中毒を起こすことは多くはありませんが、生食用以外の肉は生で食べさせると食中毒や寄生虫のリスクがあります。
生肉として与える場合は、信頼のある生食用肉を食べさせましょう。また、生肉は鮮度が落ちてしまうことが多いため、生食用の冷凍肉を毎回解凍して与えることをおすすめします。
肉の種類は1種類に限定
どの肉にアレルギーを起こすかは、犬によって違います。アレルギー検査をしていない場合は、アレルギーの可能性を減らすため、肉の種類は1種類に限定しておきましょう。
生肉は必要なのか?
生肉を食べさせるのには、メリット・デメリットがあります。生肉は絶対に食べさせた方がいいというものではありませんが、「お金」と「手間」をかけられる人で、以下のような場合には考えてもいいでしょう。
- 愛犬が肥満で困っている
- 愛犬のアレルギーをどうにかしたい
- 愛犬の歯の健康を保ってあげたい
上のようなことがなければ生肉を与えるメリットは多くありません。また、お金や手間がかけられない場合は中途半端に生肉を与える結果となり、愛犬の体調を崩してしまう原因になりかねません。

生肉を与えるメリット・デメリットを知って、生肉を与えることが愛犬にとっていいのかどうか、もう一度考えてみてくださいね。